購買行動モデルとは?重要性は?マーケティングの質が劇的に上がる活用方法
購買行動モデルとは、消費者が製品やサービスを購入するまでの心の動きや行動の過程を示すモデルです。
このモデルを理解することで、企業やマーケターはターゲットとなる消費者の心理や行動を正確に捉え、効果的なマーケティング戦略を展開できます。
本記事では、購買行動モデルの重要性や、その活用方法を詳しく解説します。
購買行動モデルとは
購買行動モデルとは、消費者が商品やサービスを購入するまでの一連の心理的、行動的過程を体系化したモデルのことです。
このモデルはマーケティングの領域で非常に重要であり、企業やマーケターはこのモデルを理解することで、効果的な広告やプロモーション活動を計画できます。
具体的には、消費者がまず商品やサービスの存在を認知する段階から始まり、次に興味や関心を持ち、その後、検討や比較を行い、最終的に購入に至るまでのステップを示しています。
インターネットの普及やSNSの登場により、購買行動のプロセスやステップは多様化してきましたが、基本的な枠組みとしての購買行動モデルは変わっていません。
このモデルを適切に活用することで、企業はターゲットとする消費者の現在位置を特定し、最も効果的なマーケティング手法やコンテンツを提供することが可能となります。
結果として、高いコンバージョン率や顧客満足度向上の実現が期待できるでしょう。
購買行動モデルの重要性
購買行動モデルは、マーケティング戦略を構築するうえでの極めて重要なツールとなります。
このモデルを理解し活用することで、消費者のニーズや興味の変遷を的確に捉え、それに応じた適切なマーケティング手法を実施することが可能となるのです。
では、具体的に購買行動モデルの活用によってどのようなメリットが生まれるのでしょうか。
適切な方法とタイミングで商品PRができる
購買行動モデルを活用することで、最も効果的な時期や方法で商品やサービスのPR活動を行えます。
例えば、消費者が商品に初めて触れる「認知」の段階では、広告やSNSでの露出を増やすことで、商品の存在を知ってもらうことが重要です。
一方、消費者が具体的に商品を検討する「考慮」の段階では、詳細な商品情報や顧客の声を提供することが効果的となります。
このように、購買行動モデルのステップごとに最適なPR手法を選定することが、効果的なマーケティングの鍵となるのです。
課題が発見しやすくなる
購買行動モデルを使用することで、マーケティング活動中に生じる課題や障壁を明確に特定し、それに対する解決策を考えることが容易となります。
例えば、多くの消費者が「興味」の段階で取り止める場合、その原因として情報提供の不足や誤解を生む広告が存在する可能性が考えられます。
これを改善するための施策を講じることで、消費者の「検討」への移行率を向上させることが期待できるのです。
購買行動モデルをもとに行動分析を行うことで、潜在的な課題を発見し、それに応じた戦略的な改善を進めることが可能です。
マス広告時代の購買行動モデル
マス広告時代、つまりテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアが主流であった時代には、消費者の購買行動は一定のパターンに従っていました。
この時代の購買行動モデルは、長年マーケティングや広告の効果を評価するうえでの基本的なフレームワークとして運用されてきました。その代表的なものが「AIDA」と「AIDMA」です。
AIDA(アイダ)
AIDAモデルは、1900年代初頭に提唱され、消費者の購買プロセスを4つの段階で表現したモデルです。
段階 | 詳細 |
---|---|
A (Attention) | 商品やサービスに対して消費者が認知や注意を引いた段階 |
I (Interest) | 商品やサービスに対する関心や興味を持つ段階 |
D (Desire) | 商品やサービスに対して実際に欲求を感じる段階 |
A (Action) | 実際に商品を購入する行動をとる段階 |
AIDAモデルは、広告やプロモーション活動の効果を評価する際の基本的な指標として用いられました。
特に、大手企業がマスメディアを活用して一斉に広告を打ち出す際の参考として利用されてきました。
AIDMA(アイドマ)
AIDMAモデルは、AIDAモデルをさらに詳細化したもので、消費者の購買プロセスを5つの段階で表現しています。
段階 | 詳細 |
---|---|
A (Attention) | 商品やサービスに対して消費者が認知した段階。 |
I (Interest) | 商品やサービスに対する関心を持つ段階。 |
D (Desire) | 実際にその商品やサービスを欲しいと感じる段階。 |
M (Memory) | 商品やサービスの情報を記憶する段階。この段階でブランドの印象が定着する。 |
A (Action) | 実際に行動を起こして商品を購入する段階。 |
AIDMAモデルは、特に日本の広告業界で広く採用されており、消費者の購買行動をより詳細に捉えられるモデルとして、多くのマーケティング担当者に活用されてきました。
インターネット検索時代の購買行動モデル
インターネットの普及とともに、消費者の情報収集の方法が大きく変化しました。
従来のマスメディアからの一方的な情報伝達ではなく、消費者自身がアクティブにWeb検索を行い、必要な情報を取得する時代となりました。
この変化を捉えて、新しい購買行動モデルが提唱され、その中でも「AISAS」と「AISCEAS」は特に注目されるモデルとなったのです。
AISAS(アイサス)
AISASモデルは、インターネット検索時代の消費者の購買プロセスを5つの段階で表現したモデルです。
段階 | 詳細 |
---|---|
A (Attention) | 商品やサービスに対して認知した段階。Web広告やブログなどのコンテンツから、消費者が商品やサービスを見つける。 |
I (Interest) | 商品やサービスに対する関心を持つ段階。詳細な情報検索や比較検討が行われる。 |
S (Search) | さらに詳しい情報を検索する段階。レビューサイトやQ&A、口コミなどでの情報収集が活発になる。 |
A (Action) | 実際に商品やサービスを購入する段階。オンラインショップや実店舗での購入行動へと移行する。 |
S (Share) | 購入後の体験や感想を共有する段階。SNSやブログでの投稿、レビューの書き込みなどが行われる。 |
このモデルは、消費者が商品情報を自ら検索し、購入後にその経験を共有する行動を強調しています。
AISCEAS(アイシーズ)
AISCEASモデルは、AISASモデルをさらに詳細化し、消費者のエンゲージメントを考慮したモデルです。
段階 | 詳細 |
---|---|
A (Attention) | 商品やサービスに対して認知した段階。 |
I (Interest) | 商品やサービスに対する関心を持つ段階。 |
S (Search) | さらに詳しい情報を検索する段階。 |
C (Consideration) | 複数の商品やサービスを検討し、比較する段階。 |
E (Experience) | 商品やサービスの体験段階。トライアルやサンプルを利用することが含まれる。 |
A (Action) | 実際に商品やサービスを購入する段階。 |
S (Share) | 購入後の体験や感想を共有する段階。 |
このモデルは、特に高額商品やサービス、複雑な製品などの購入を検討する際の消費者の行動パターンを捉えるのに適しています。
SNS時代の購買行動モデル
SNSの普及に伴い、消費者の購買行動も大きく変化しました。友人や知人の推薦、オンライン上の評価やレビューが購買の決断に大きく影響を及ぼしているためです。
この変化に対応して新しい購買行動モデルが提唱され、その中でも「VISAS」と「SIPS」はSNS時代を象徴するモデルとして注目されています。
VISAS(ヴィサス)
VISASモデルは、SNSが主流となった現代の消費者の購買プロセスを5つの段階で表現したモデルです。
段階 | 詳細 |
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V (Viral) | 商品やサービスに関する情報が口コミとして広まることで、消費者が商品を初めて知る。 |
I (Influence) | 口コミを伝えた人物の意見や評価により、消費者はその商品やサービスに興味を持ち始める。 |
S (Sympathy) | 影響を受けた商品やサービスの特徴、利益などに対して消費者が共感や興味を持ち始める。 |
A (Action) | 商品やサービスに対する興味や共感から、消費者が購買に至る。 |
S (Share) | 購買した商品やサービスの感想や評価をSNSなどの媒体を通じて他の消費者と共有する。 |
このモデルは、SNS上の口コミや人の意見に影響を受けて、商品やサービスに興味を持つ現代の消費者の行動パターンを捉えるのに適しています。
SIPS(シップス)
SIPSモデルは、SNSの中でも特にインフルエンサーの影響を強く取り入れた購買行動モデルです。
段階 | 詳細 |
---|---|
S (Sympathize) | 企業や友人からの情報を受け、それに対して消費者が共感や興味を感じる。 |
I (Identify) | 共感した情報の真偽や詳細を知るために、口コミやネット検索を行い、情報を確認する。 |
P (Participate) | 共感や確認を経た後、実際に商品の試用や購入、イベントへの参加、SNSでの「いいね」などの行動をする。 |
S (Share&Spread) | 自分の体験や意見をSNSを通じて共有し、それがさらに他の人々に広がる。 |
このモデルは、特に若年層を中心にインフルエンサーが拡散した情報の影響を強く受ける消費者の、購買行動を捉えるのに適しています。
コンテンツマーケティング時代の行動モデル
コンテンツマーケティングの普及と重要性の増加に伴い、従来の購買行動モデルが変化を遂げてきました。
中でも「DECAX」という新しいモデルは、コンテンツが消費者の購買行動に及ぼす影響を詳細に捉えるためのものとして注目されています。
この新しいモデルと従来のモデルとの違いについて解説します。
DECAX(デキャックス)
DECAXモデルは、コンテンツマーケティングが中心となる現代の購買環境において、消費者の購買過程を的確に捉えるためのモデルです。
段階 | 詳細 |
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D (Discovery) | 顧客がブランドやサービスに気づく初期段階。 |
E (Engage) | 顧客がブランドとの関与を深め、コンテンツを詳しく調査・参照する段階。 |
C (Check) | 顧客が購入を検討し、商品やサービスの詳細を確認する段階。 |
A (Action) | 顧客が実際に購入やサービスへの参加を決定する段階。 |
X (eXperience) | 顧客がサービスや商品を体験し、その後の行動や意向が形成される段階。 |
このモデルは、商品やサービスを購入した後の体験やフィードバックを重視する考え方で、リピート購入や口コミを通じてのブランドロイヤリティの形成を目指しています。
そのほかの購買行動モデルとDECAXの違い
DECAXを他の伝統的な購買行動モデルと比べると、大きく異なる特徴があります。最も大きな違いは、従来のモデルが企業中心で考えられているのに対し、DECAXは消費者中心でデザインされていることです。
DECAXの初めのステップは「Discovery(発見)」となっており、これは消費者が自分から情報や商品を見つけ出すことを意味します。
一方、AIDMAやAISAS、AISCEASのような従来のモデルは「Attention(注意)」から始まり、これは「企業の広告や情報が消費者の興味を引く」という側面が強いです。
つまり、DECAXは消費者の積極的な行動を前提としており、マーケティング活動もそれに応じて、消費者の立場やニーズを考慮することが求められているのです。
購買行動モデルを活用するときの注意点
購買行動モデルを効果的に活用するためには、その背後にある理論や考え方を理解することはもちろん、現代の消費者行動やトレンドを把握することが不可欠です。
以下では、購買行動モデルを利用する際の注意点やポイントを解説します。
購買行動モデルは時代や商品によって異なる
購買行動モデルはマーケティングのガイドラインとして考えられていますが、その適用範囲は時代や商品、ターゲットとなる消費者によって変動します。
例えば、20世紀の消費者と21世紀のデジタルネイティブの消費者とでは、情報の取得方法や購買プロセスが異なる可能性があります。
このような背景を考慮せずにモデルを適用すると、マーケティング戦略が外れるリスクが高まってしまうのです。
ペルソナ設定をしてコミュニケーションの最適化を図る
ペルソナを設定することで、消費者のニーズや課題、情報収集の方法などを明確にし、それに合わせたコミュニケーションの最適化が可能となります。
ペルソナとは、特定のターゲットグループを具体的に描写した仮想の人物像のことです。購買行動モデルと併用することで、ターゲットとの関係性を深化させ、効果的なマーケティング施策を展開できるでしょう。
モデルでは説明できない購買行動も存在する
消費者行動が複雑かつ変動的になっていく中で、モデルでは説明できない購買行動も多く存在します。
特に、インターネットの普及やスマートフォンの利用が増加する中、多様な情報源や購買経路が存在する現代では、モデルだけでは捉えきれない行動が増えてきました。
そのため、モデルを鵜呑みにせず、常に現場の声やデータを基にして施策を見直す姿勢が求められます。
購買行動と消費者行動との違い
購買行動は、商品やサービスを購入するまでの消費者の心理的、行動的プロセスを指します。一方、消費者行動は、購入後の使用や評価、廃棄なども含め、商品やサービスに関連するすべての行動を意味する概念です。
購買行動は消費者行動の一部として位置づけられるため、マーケティング施策を考える際には、これらの違いを理解し、それぞれのステージに合わせたアプローチが必要となります。
購買行動モデルを理解して質の高いマーケティングを実現しよう
購買行動モデルの理解は、競争が激しいマーケティング環境での成功につながります。本記事で紹介したさまざまな種類のモデルは、消費者の購買プロセスを深く理解し、それに合わせた最適なマーケティング戦略を築くための貴重な要素です。
ビジネスモデルの多様化や、ターゲットとなる消費者の変化に応じて、最適なモデルを選択し、実際のマーケティング施策に活かすことで、効果的なコミュニケーションを実現できます。
最後に、モデルはあくまで1つのフレームワークであるため、常に現場の声やデータをもとに柔軟に対応する姿勢が求められます。賢明なマーケターとして、購買行動モデルの知識を活かし、質の高いマーケティングを目指しましょう。