企業のWebサイトにSSL(Secure Sockets Layer)を組み込むことでデータ通信は暗号化されてセキュリティが向上し、訪問者が安心してサイトにアクセスできるようになります。
現代社会においてSSL化はWebサイトの義務ともいえる対策です。
本記事ではSSLの意味や仕組み、企業のWebサイトでなぜSSLが必要なのか、SSLの導入に伴うメリット・デメリットを解説します。
企業のWeb担当者や自社WebサイトがまだSSL化されていない方は、ぜひ参考にしてください。
SSL化しないとどうなる?
SSLとは訪問者のブラウザとサーバー間のデータ通信を暗号化する技術です。SSLを導入するとWebサイトのURLはhttpsに変更されます。
この事実を知っていれば、アクセスするユーザーは自分が見ようとしているWebサイトがSSL化しているかどうかは一目瞭然というわけです。
そこで、SSL化をしなければどのようなリスクがあるのかを紹介します。
サイト制作初心者の場合、WordPressを活用してオウンドメディアやブログを運営するケースも多いでしょう。その際に、管理画面で情報を入力することが多く、これにはメールアドレスや個人情報が含まれることもあります。それらが全世界に開放されてしまうリスクを回避する意味でも、SSL化の重要性は理解する必要があります。
個人情報の漏洩リスクがある
SSLを導入していないサイトは個人情報の漏洩リスクが高まります。
SSLを使用しない通信は暗号化されていないため、第三者がデータ通信を傍受しやすくなります。具体的には、ユーザーがWebサイトに送信する個人情報(例: パスワード、クレジットカード番号、住所など)が第三者に漏洩するリスクが大きくなることをさします。
データ改ざんやなりすましのリスクがある
SSLはデータの改ざんやなりすましを防ぐセキュリティプロトコル(機密性を確保するための技術)です。そのため、SSLを導入しないWebサイトはデータの改ざんやなりすましのリスクがあがります。
なりすましへの対策としては、企業が実在を証明するSSLサーバー証明書の導入が効果的です。SSLサーバー証明書の詳細は後述します。
ユーザー離脱による問い合わせ機会の損失が発生する
SSL未対応のWebサイトは「保護された通信」というメッセージが表示されないので、問い合わせや注文などの獲得はおろか、クリックさえも逃しかねません。
前述したとおりユーザーは簡単にSSLの導入有無が確認できます。
そのため、申し込みフォームや登録ページがSSL非対応であると、データセキュリティの不安から申し込みをためらったり離脱したりするでしょう。
このように、SSL未導入のサイトはユーザー離脱による問い合わせ機会損失が発生する可能性があるのです。
SEO評価が下がる
SSLが未導入のサイトは同じ内容を提供するSSL導入済みのサイトに比べて不利に評価されます。なぜなら、GoogleはSSLを導入しているサイトを好意的に評価し、より上位にランク付けするためです。
したがって、SSLはセキュリティとプライバシーを強調し、ユーザーエクスペリエンスを向上させる要素ともいえます。SSL導入の有無はSEO(Search Engine Optimization=検索エンジン最適化)に影響を及ぼすことを覚えておきましょう。
アクセス解析の精度が低下する
SSL化しない場合、アクセス解析ツールによって正確なデータを収集するのが難しくなります。理由としては、SSL化されたWebサイトへのトラフィックがhttpからhttpsへ移行し、リファラーデータの一部が非表示になるためです。
リファラーデータは、訪問者がどのWebページからWebサイトにアクセスしたのかを示す情報です。httpsページからhttpページへのリンクにおいてリファラーデータは安全性上の理由から非表示になるため、トラフィックの出所を正確に把握するのが難しくなります。
結果として、Webトラフィック追跡が困難になり、アクセス解析の精度も下がります。
SSL化サイトと比較して表示速度が低下する
SSL化しないと、Webサイトの表示速度が低下するリスクもあります。
なぜなら、SSL化を行うことで次世代プロトコルである「HTTP/2」を利用できるようになり、これが表示速度向上に大きな影響を与えるからです。
「HTTP/2」はWebページの高速化を目的に開発されたプロトコルで、次のような機能があります。
- 複数のリクエストとレスポンスを同時に処理
- ヘッダー情報を圧縮してデータの転送量が削減
- 優れたプライオリティ制御
いずれもWebサイトを訪れたユーザーエクスペリエンスの向上を目的としています。これらが機能しないことで、Webサイトがいわゆる「重たい」状態になるのです。
混合コンテンツはブロックされる
非SSL化による影響として混合コンテンツ(Mixed Content)のブロックもあげられます。混合コンテンツとは、Webページ内で一部が安全なHTTPS経由で提供され、ほかの部分が安全ではないHTTP経由で提供されるサイトのこと。
GoogleはChromeブラウザにおいて、混合コンテンツをブロックするポリシーを強化しています。そのため、非SSLなコンテンツがWebページに含まれていると、Googleは一部のコンテンツをブロックすることがあるのです。
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独自SSL証明書の種類と費用
データの保護を確保するためにSSL証明書の導入は非常に重要です。
SSL証明書にはさまざまな種類があり、ビジネスのニーズや予算に合わせて選択できます。ここでは独自SSL証明書の種類と費用についてお伝えしていきます。
ドメイン認証型
ドメイン認証型(Domain Validation、DV)はSSL証明書の一種で、Webサイトの所有権が特定のドメイン名に関連付けられていることを証明します。
DV証明書はWebサイトの通信を暗号化するために使用され、一般的に個人ブログや小規模なWebサイト、非営利団体のホームページなどセキュリティ要件が比較的低いWebサイトに適しています。費用は10,900円 (税込11,990円)です。
企業認証型
企業認証型(Organization Validation、OV)は、SSL証明書の一種で、Webサイトを所有する企業や組織の身元情報を検証し、証明書の発行者によって認証されます。
OV証明書はWebサイトの通信を暗号化し、Webサイト訪問者に信頼性を提供するために使用されます。費用は49,800円(税込 54,780円)です。
EV認証型
拡張検証型(Extended Validation、EV) SSL証明書は、SSL証明書の最高レベルの認証とセキュリティを提供するタイプの証明書です。EV証明書はWebサイトの運営者が法的に存在し、信頼性が高い企業や組織であることを証明するために、厳格な検証プロセスを経て発行されます。EV証明書を使用するWebサイトは、高い信頼性とセキュリティを提供し、訪問者に安心感をもたらします。そのため料金は高額で、提供元によりますが数万円~十数万円です。
SSL化の注意点
SSL(Secure Sockets Layer)証明書はWebサイトのセキュリティを向上させ、訪問者のデータを保護するための基盤です。しかし、SSL化には注意点を理解したうえで、適切な実装が必要です。ここではSSL化に関する注意点を紹介するので、しっかり押さえておきましょう。
更新の必要がある
SSL証明書は有効期限があり、定期的に更新する必要があります。証明書の期限切れを避けるため、定期的な更新が求められます。そのため、Webサイト運営者はSSL設定と管理を徹底しましょう。
SNSのカウントボタンがリセットされる
WebサイトのURLがhttpsに変更されると、一部のSNSプラットフォームでは以前のhttpのURLとは別のものとして扱われます。
結果としてSNSのエンゲージメント(例::シェア、いいね、ツイート)がリセットされることがあります。
サイト全体を守るわけではない
SSL証明書は通信を暗号化する役割を果たしますが、サイト全体を保護するわけではありません。Webサイトのセキュリティ対策はSSL化だけでなく、Webサイトの運用やセキュリティ対策、アップデートなどに対して総合的な品質管理へのアプローチが必要です。
暗号化された通信の中に脅威があっても検知できない
SSL通信は通信内容を暗号化しますが、通信の中に潜む悪意あるコンテンツや攻撃を検知する機能はありません。
そのため、ウイルススキャンやファイアウォールなどのセキュリティ対策が必要です。
また、https通信の可視化やセキュリティ監視として、通信の中身を監視して悪意あるコンテンツを検知する仕組みが必要です。
SSL化の手順
SSL化は初めてWebサイトを運営する方にとっては複雑に思えるかもしれません。
続いては、SSL化の手順を詳しく解説し、Webサイトを安心・安全なものにするためのガイドをお伝えしていきます。SSL証明書の導入から設定までを理解し、Webサイトのセキュリティを向上させる方法をしっかり押さえておきましょう。
自身のサーバーの状況を確認する
まずは現在利用中のサーバーがhttps化可能かどうかを確認しましょう。一部のレンタルサーバーはhttps対応していないことがあるため注意が必要です。
さらに、一般公開前にWebサイトをテストするための「テストサーバー」を提供している企業も存在します。テストサーバーを使用する際にもhttps通信に対応させることをお忘れなく。
CSRを作成する
次に、SSLサーバー証明書を取得するために必要な「証明書署名要求(CSR)」を作成します。CSRには、Webサイトや運営者情報などを含む「ディスティングイッシュネーム」を入力する必要があります。CSRの作成手順はサーバーごとに異なるため、現在利用中のサーバーの作成ドキュメントを確認してください。
SSLサーバー証明書の申請・インストールを行う
CSRの作成後、SSLサーバー証明書を申請して取得する作業に進みましょう。SSLサーバー証明書には「共有SSL」と「独自SSL」の2つの種類があります。https化には独自SSLが必要です。共有SSLはサーバー会社が取得し、複数のユーザーで共有される証明書のことで、独自SSLはWebサイトの所有者が取得する証明書です。
さらに独自SSLには前述のとおり種類が3つあります。
- 個人向けの「ドメイン認証型(DV)」
- 法人向けの「企業認証型(OV)」
- 法人向けかつ最も厳格な「EV認証型」
認証の厳格さに応じて費用も変わるため、運営するWebサイトに最適な独自SSLを選択しましょう。
リンクの置換を行う
Webサイトのhttps化手順は完了しましたが、Webサイト内のHTMLやCSSに記述されたリンクはまだ「http://」のままです。
したがって、Webサイト内のすべての絶対パス(URLをフルに記述する形式)のリンクを「https://」に置換する必要があります。置換が必要なのは絶対パスで記述されたリンクだけで、相対パス(現在のファイルから目的ファイルまでの経路)やルートパス(ドメイン名のみを省略して指定する形式)の場合は置換の必要はありません。
適切なツールやスクリプトを使用して、該当するリンクを「https://」に更新しましょう。
リダイレクト設定を行う
「http://」から「https://」へのリダイレクト設定は非常に重要です。
リダイレクトとは、ユーザーが開いたURLから新しい「https://」ページに自動的に転送する仕組みのこと。
https化後、元の「http://」ページにアクセスしたユーザーを新しいページに誘導するために必要な設定です。リダイレクト設定を怠ると外部に貼られた「http://」のURLがリンク切れとなり、ユーザー流入の機会を失います。
また、リダイレクトを設定することで「http://」時代のSEO評価を引き継ぐことができます。そして、GoogleサーチコンソールとGoogle アナリティクスでのURL再登録もお忘れなく。
外部連携サービスの設定を変更する
使用している外部連携サービスがhttpsに対応しているか確認しましょう。
多くの外部サービスはセキュリティのためにhttpsをサポートしていますが、念のため確認が必要です。もし外部連携サービスがhttpsに対応している場合は、Webサイトの設定を更新して新しいURLを使用するように変更する必要があります。
この作業にはAPIキーや認証情報、URLエンドポイントなどの変更も含まれます。
エラーがないか確認する
外部連携サービス設定を変更した後、外部連携サービスとの連携が正常に機能していることを確認しましょう。もしエラーが起きたり、外部連携サービスの変更がユーザーや顧客に影響を及ぼしたりしそうな場合、さらに適切な更新を行う必要があります。
SSL化に関するよくある質問
最後にSSL化に関するQ&Aをみていきましょう。
常時SSL化ってなに?
常時SSL化とは、WebサイトやWebアプリケーションが常にSSL(Secure Sockets Layer)またはTLS(Transport Layer Security)プロトコルを使用して通信することを指します。これは、Webページやデータの送受信時に情報を暗号化し、安全な接続を提供するためのセキュリティ対策です。常時SSL化を採用することで、データの盗聴や改ざんから保護され、Webサイトの信頼性が向上します。
共有SSLと独自SSLの違いってなに?
共有SSLとは、サーバー会社が取得したSSL証明書を複数のユーザーで共有することです。一方、独自SSLとは特定のWebサイトまたはドメイン専用に設定されたSSL証明書です。
共有SSLは無料または低コストで提供され、主に小規模なWebサイトや個人のブログ向けですが、独自SSLは大企業やeコマースサイトなど、セキュリティが重要なWebプロパティにおすすめといった違いがあります。
サイトのSSL化は必須!自社に合ったSSLを導入しよう
オンラインビジネスが拡大する近年、ほとんどのWebサイトがhttps化を進めています。
サイト運営者に複数のメリットが見込めるほか、サイト利用者にも安心感を与えられるため、まだhttps化していない方は自社に合ったSSL導入を早めにご検討ください。