「メリット」と「ベネフィット」は、商品やサービスの価値を伝える重要な役割を担っています。しかし、はっきりとした違いがわからない方も多いでしょう。
本記事では、メリットとベネフィットの違いを基礎から徹底解説していきます。
両者の定義を理解し、適切に活用することで、訴求力が飛躍的に向上するでしょう。
メリットとベネフィットの違い
メリットとベネフィットは、同じような意味に見えて明確な違いがあります。
まずは、メリットとベネフィットの基本的な意味や使い方を確認しておきましょう。
メリットの意味
メリットは、日本語で「長所」や「利点」といった意味の言葉です。
対義語は「デメリット」で「短所」や「欠点」を意味します。
例として、ワイヤレスイヤホンのメリットとデメリットを考えてみましょう。
- メリット:ケーブルが絡まらない、断裂の心配がない
- デメリット:紛失しやすい、音が途切れやすい
商品・サービスについて、肯定的な特徴はメリット、否定的な特徴はデメリットとして述べます。
ベネフィットの意味
ベネフィットは、日本語で「利益」や「恩恵」といった意味の言葉です。
対義語は「ロス」や「ディスアドバンテージ」「ダメージ」などがあげられます。
例として、ワイヤレスイヤホンのベネフィットとロスを考えてみましょう。
- ベネフィット:開放的に音楽が楽しめる
- ロス:お金が無駄になる可能性がある
ワイヤレスイヤホンを使うことで、ケーブルの煩わしさからは解放されますが、紛失によって購入代金が無駄になる可能性も考えられますよね。
このように、商品・サービスを利用することによるプラスの効果を述べるときはベネフィット、マイナスの効果を述べるときはロスを使います。
メリットとベネフィットは与えられるメッセージが異なる
メリットは「売り手目線」、ベネフィットは「顧客目線」のメッセージを伝える役割を担っています。
詳しく見ていきましょう。
メリットは売り手目線の商品やサービスの特徴
商品・サービスを紹介する際、メリットのみを述べても、顧客にはイマイチ刺さらないメッセージになってしまいます。
例として、メリットのみで構成したソファの紹介文を見てみましょう。
- 落ち着いたカラーを3色展開しています。
- ウレタン多層構造を採用し、しっかりとした弾力があります。
- クッションが付属しています。
上記の文章は、売り手目線でソファの強みや特徴が記載されていますが、購入することで得られる利益は伝わらないでしょう。
ベネフィットは顧客が得られる利益
商品・サービスの紹介文を魅力的にするためには、顧客が獲得できる利益を記載することが重要です。
メリットのみで構成したソファの紹介文に、ベネフィットを追加してみました。
- 落ち着いたカラーを3色展開しており、自然と空間になじんでおしゃれなお部屋に仕上がります。
- ウレタン多層構造によるしっかりとした弾力があり、安定感と心地よさを両立した座り心地を実現しました。
- クッションが付属しており、統一感のあるデザインによってインテリアとしても楽しめます。
上記の文章からは、ソファを購入することで「おしゃれなお部屋」や「心地よく過ごせるスペース」が得られることが伝わってきますね。
メリットとベネフィットを伝える効果
商品・サービスを効果的にアピールするには、メリットとベネフィットの両方をうまく使い分けることが重要です。
メリットとベネフィットを伝える効果について、それぞれ説明します。
メリットを伝える効果
メリットを伝えると、商品・サービスについて知識が豊富な方に対して響きやすいメッセージになります。
メリットは、商品・サービスの機能や性能、成分といったスペックをアピールできるからです。
たとえば、ダイエットサプリをいろいろ試している方に「すっきり痩せられます」というベネフィットだけ伝えても、あまり魅力的には感じないでしょう。
しかし「〇〇という成分が入っている」「〇〇は脂肪燃焼効果がある」といったメリットを伝えることで、他社商品との差別化や自社への信頼度アップに繋がることが期待できます。
ベネフィットを伝える効果
ベネフィットを伝えると、商品・サービスの知識がまだない方に響きやすいメッセージになります。
ベネフィットは、商品・サービスを購入することで得られる、明るい未来をアピールできるからです。
たとえば、ダイエットサプリを試したことがない方にいくら成分を説明したところで、理解できなかったり、ほかの商品と比べたりすることもできません。
一方で「飲むだけで太りにくい体へ」など、読者が抱える悩みから解放されるとアピールすることで、購買意欲を高める効果が期待できます
伝え方を工夫することが重要
顧客によって効果的な訴求方法は変わります。
まずは、ターゲットを明確にしたうえで、メリットやベネフィットの伝え方を工夫してみましょう。
ベネフィットは「メリットによって生じる明るい未来」です。ベネフィットをアピールすることで、見込み顧客の興味を引く効果が期待できます。
ただし、知識が豊富な方にベネフィットを伝えるだけでは響かないこともあるでしょう。その際は、メリットを強調することで、自社商品ならではの強みを見せることがおすすめです。
メリットとベネフィットの例
メリットとベネフィットが混同しないよう、具体的な例を見ていきましょう。
商品・サービス | メリット | ベネフィット |
---|---|---|
美容サプリ | ・肌のうるおいが増す ・肌荒れを防ぐ ・シミ・シワを改善する | ・「キレイ」「かわいい」と褒めてもらえる ・マスクなしでも自信を持って外出できる |
ジムへの入会 | ・最新のマシーンが使える ・知識のあるトレーナーに教えてもらえる | ・運動によって健康を維持できる ・理想の体型になって自信が持てる |
冷凍弁当の宅配サービス | ・レンジで解凍するだけでご飯が完成する ・栄養士が監修したバランスのよいメニューが食べられる | ・ゆとりが生まれ好きなことに時間を使える ・食事によって健康を維持できる |
上記はあくまで例であり、商品によってさまざまなメリットやベネフィットが想定できます。
ベネフィットが重要視される理由
コピーライティングやマーケティング業界の有名な格言に「ドリルを買う人が欲しいのは『穴』である」という言葉があります。
つまり、顧客は「穴を開ける」ことが目的であり、ドリルは目的を果たすための道具にすぎないということです。
商品・サービスを購入する目的は、商品そのものではなくその先にある利益(=ベネフィット)であるため、訴求する際には最重要と考えられています。
同じ商品・サービスであっても、ベネフィットは人によって変わります。たとえば、同じダイエットサプリであっても「スリムになって好きな洋服が着られるようになる」のか「スタイルがよくなって好きな人から愛される」のか、人によって目的が変わるためです。
万能な訴求文はないので、まずはペルソナをしっかりと想定したうえで、効果的なメッセージを考えてみましょう。
ベネフィットの種類
経済学者のデビッド・アーカー氏は、ベネフィットを「機能的ベネフィット」「情緒的ベネフィット」「自己実現ベネフィット」の3種類に分類しました。
それぞれの特徴を紹介します。
機能的ベネフィット
機能的ベネフィットとは、商品・サービスの機能や性能によってプラスに働く効果のこと。メリットに近い意味で使われています。
具体例としては「早い」「簡単」「おいしい」「軽い」「頑丈」といった訴求があげられます。
電動歯ブラシを例として考えてみましょう。
- パワフルな洗浄力で簡単歯磨き
- 1回の充電で2週間使えて便利
電動歯ブラシの機能・性能によってプラスに働く効果を表しているので、機能的ベネフィットですね。
情緒的ベネフィット
情緒的ベネフィットとは、商品・サービスによって顧客が得られるプラスの感情のこと。
具体例としては「安心感」「幸福感」「充実感」「優越感」「楽しさ」といった訴求があげられます。
電動歯ブラシを例として考えてみましょう。
- パワフルな洗浄力によって虫歯予防ができて安心
- 細かいところも素早く洗浄できてイライラから解放される
電動歯ブラシによって得られるプラスの感情を表しているので、情緒的ベネフィットですね。
自己実現ベネフィット
自己実現ベネフィットとは、商品・サービスによって実現できる理想の自分のこと。
具体例としては「自分らしくいられる」「自分に自信が持てる」といった訴求があげられます。
電動歯ブラシを例として考えてみましょう。
- 白い歯になって笑顔に自信が持てる
- 口臭を予防して人前でも堂々と話せる
電動歯ブラシによって近づける理想の自分を表しているので、自己実現ベネフィットですね。
顧客に響くベネフィットをあぶり出す方法
商品・サービスによっては、ベネフィットを考えるのが難しかったり、まだ見つけられていなかったりする場合もあるでしょう。
そんなときは、以下3つの方法を試してみてください。
商品やサービスの特徴やメリットを洗い出す
まずは、商品・サービスについて徹底的に知ることが重要です。機能や成分、強み、開発ストーリーなどをすべて書き出しましょう。
クライアントへのヒアリングや、資料の読み込み、競合他社の商品と比較するなどで、思わぬ特徴を見つけられることもあります。
ターゲット層を明確にする
同じ商品であっても、人によってベネフィットは異なります。そのため、自社商品のターゲット層を明確にしておきましょう。
たとえば、同じスーツケースであっても「20代の男性」と「40代の男性」をターゲットにした場合では、求めているベネフィットがまったく違います。
- 20代男性:デザインがおしゃれで友達と旅行に行くときに自慢できる
- 40代男性:軽くて大容量で家族と旅行に行くときに便利
宣伝や販売方法などにも関わるため、ベネフィットを確定する前にターゲット層をはっきり決めておきましょう。
メリットから顧客が叶えられることを考える
いきなりベネフィットを考えるのが難しいときは、メリットから考えてみましょう。
たとえば、ビジネスバックのメリットとして以下をあげてみます。
- 軽くて大容量
- 頑丈で壊れにくい
上記のメリットから顧客が叶えられることを連想してみましょう。
- 軽くて大容量なので、荷物が多いときも楽に持ち運べる
- く、何度も買い替える必要がないのでお財布に優しい
上記のように、メリットから商品のベネフィットを連想することが可能です。
メリットとベネフィットを伝えるときの注意点
メリットとベネフィットを伝える際は、以下4つのポイントを認識しておきましょう。
伝える側はメリットだけを伝えがち
商品・サービスのよさをアピールしたいがために、メリットだけを羅列してしまうことはよくあります。
たとえば、日焼け止めの紹介文として「強力な紫外線カット」「うるおい成分配合」といった訴求は、メリットのみ書かれている状態です。
メリットだけでも魅力を感じて購入する顧客もいますが、購買意欲をかきたてるような文章とはいえないでしょう。
顧客の潜在ニーズに気づく
潜在ニーズとは、本人も自覚していない欲求のこと。反対に、本人が気づいている欲求については「顕在ニーズ」と呼びます。
潜在ニーズを探ることで、商品・サービスの効果的なベネフィットを打ち出すことが可能です。
しかし、潜在ニーズを探るためには、購入者へのインタビューや複数の消費者について行動観察をおこなうといった、独自の調査が必要です。
ベネフィットの定義を深く理解する
「ベネフィット」は「利益」「恩恵」「ためになること」といった意味を持つ言葉です。
マーケティングにおけるベネフィットは「商品・サービスによって顧客が得る利益」を指します。
混同しやすい「メリット」は、商品・サービスの特徴や強みを意味する言葉です。
ベネフィットは、顧客に響く魅力的な訴求をおこなうために重要であるため、ほかの言葉と混同しないように注意しましょう。
ありきたりなベネフィットは避ける
顧客が簡単にイメージできるようなベネフィットでは、独自の魅力が伝わりません。
たとえば、ダイエットサプリであれば「スタイルに自信が持てる」といった内容です。ダイエットサプリであれば当たり前のベネフィットであるため、訴求としてはいまひとつといえるでしょう。
他社商品にはないベネフィットを洗い出すことが、購入者やリピーターの獲得に繋がります。
違いを理解して顧客の「欲しい」を刺激しよう
「メリット」は商品・サービスの特徴や強み、「ベネフィット」は商品・サービスによって得られる利益を意味します。
メリットとベネフィットをうまく盛り込むことで、顧客の購買意欲を刺激するような訴求が実現します。
自社商品ならではのベネフィットをアピールするためにも、まずはターゲット層を明確にし、商品・サービスのメリットを徹底的に調査しましょう。