こそあど言葉は、物事を指し示すときに使われる言葉で「あれ」「それ」などと表現されます。
しかし、何を指し示しているのかが明確でないと相手にうまく意図が伝わらない可能性があります。
この記事では、こそあど言葉の基本について詳しく解説していきます。
「こそあど言葉」とは?
最初に、こそあど言葉の定義について確認していきましょう。
定義を理解しておくことで、こそあど言葉を使うべき場面が明確になります。
「これ」「それ」「あれ」「どれ」など指示語の総称
「こそあど言葉」は代名詞や指示詞を表現するために用いられ「物事を指し示すときに使う言葉」と定義されます。
具体的には、「これ」「それ」「あれ」「どれ」など指示語の総称のことです。
こそあど言葉は、日本語において特定の対象を指し示す役割を持ち、話し手や聞き手の視点からその対象を位置づけます。
こそあど言葉を大別すると、「これ・それ・あれ・どれ」「この・その・あの・どの」「ここ・そこ・あそこ・どこ」「こう・そう・ああ・どう」というグループに分けることが可能です。
指示語 | 意味 |
これ・それ・あれ・どれ | 物事や概念を指す |
この・その・あの・どの | 名詞の前につけて、特定の名詞を指す |
ここ・そこ・あそこ・どこ | 場所を指す |
こう・そう・ああ・どう | 方法や状態を指す |
こそあど言葉は、日本語のコミュニケーションにおいて非常に重要であり、話し手と聞き手が共有する情報を効果的に表現するために用いられます。
適切に使うとシンプルでわかりやすい文章になる
こそあど言葉は、情報を具体的にし、文章をシンプルで分かりやすくする役割を果たします。
例えば、「美味しいケーキを見つけた」という文は、何のケーキをどこで見つけたのか具体的ではありません。
しかし、「このパティスリーで美味しいケーキを見つけた」と言えば、「この」が指す場所がパティスリーであると具体的に理解できます。
また、「書類を渡してください」という指示は曖昧ですが、「その書類を渡してください」とすれば、「その」が指す特定の書類を渡すことを明示的に指示していることが理解できるでしょう。
「場所が分からない」という表現は一般的すぎますが、「この場所が分からない」と言えば、「ここ」が指す特定の場所が分からないことがはっきりします。
疑問形の場合も同様で、「何をすればいいの?」と尋ねるより、「どうすればいいの?」と尋ねた方が、求める回答を行動や方法という具体的な形で絞り込むことが可能です。
これらの例からもわかるように、こそあど言葉を適切に使うことで文章はより明確で具体的になり、伝えたい情報をはっきりと理解しやすくすることができます。
こそあど言葉(指示語)の品詞ごとの基本の使い方
こそあど言葉を品詞ごとにまとめた場合は、次の表のように整理することが可能です。
以下では、それぞれの品詞ごとに、こそあど言葉の役割を整理していきます。
品詞 | こ(近称) | そ(中称) | あ(遠称) | ど(不定称) |
代名詞 | これ | それ | あれ | どれ |
形容動詞 | こんな | そんな | あんな | どんな |
副詞 | こう | そう | ああ | どう |
連体詞 | この | その | あの | どの |
指示代名詞
「これ・それ・あれ・どれ」は、こそあど言葉の中でも指示代名詞として用いられる部分で、物事や概念を指し示すのに使用されるのが特徴です。
【これ】
「これ」は話し手が自分の近くにある物事や概念を指し示すときに使用します。
例えば、話し手が手に持っている物や、話し手のすぐ近くにある物を指す場合です。
「これは私のペンです」といった形で使用するケースが多いでしょう。
【それ】
「それ」は聞き手の近くにある物事や、すでに会話の中で触れられている物事を指し示すために使用されます。
例えば、「それはあなたのカバンですか?」のように使用するのが一般的です。
【あれ】
「あれ」は話し手も聞き手も近くにない、つまり遠くにある物事や、まだ具体的に指摘されていない物事を指します。
「あれは何ですか?」といった使い方が一般的です。
【どれ】
「どれ」は疑問詞として使用され、どの物事を指しているのかを問うために使用されます。
選択肢の中からどれを指しているのかを尋ねる際などに、「どれがあなたのカバンですか?」といった形で使われます。
これらの指示代名詞は、場所や話の文脈によって使い分けられ、特定の物事を明確に指し示す役割を果たしています。
指示形容詞
「こんな・そんな・あんな・どんな」は、こそあど言葉の中でも指示形容詞として用いられ、形状、性質、状態などを示すのに使います。
【こんな】
「こんな」は話し手が自分の近く、または自分が経験している状況や状態、特性を指すときに使用するケースが多いでしょう。
「こんなに難しい問題は解けない」というように使用されます。
【そんな】
「そんな」は聞き手が経験している状況や状態、または話題として出された事物の特性を指すために使用されます。
「そんなに急いでどこへ行くの?」のように使用されます。
【あんな】
「あんな」は話し手も聞き手も経験していない、または特定されていない状況や状態、特性を指すため、「あんなに遠いところへは行けない」といった形で使われるケースが多いでしょう。
【どんな】
「どんな」は疑問形で、どのような状況や特性を指しているのかを問うために使用されます。
「どんな人が好きですか?」といった形で使われるのが一般的です。
これらの指示形容詞は、話し手と聞き手の視点、場所、時間などの文脈に応じて使い分けられ、特定の状況や特性を明確に示す役割を果たします。
指示副詞
「こう・そう・ああ・どう」は、こそあど言葉の中でも指示副詞として用いられ、動作や状態、態度などを指し示すのに使用されます。
【こう】
「こう」は話し手が示す動作や状態を指すときに使用するのが普通です。
「こうしてみてはどうですか?」のように、自身の行動を模範として示す際に使われます。
【そう】
「そう」は聞き手の行動や状態、または話題として出された動作や状態を指すために使用されるケースが多いでしょう。
「そう急がなくても大丈夫ですよ」といった形で使用されます。
【ああ】
「ああ」は話し手も聞き手も行っていない、または特定されていない動作や状態を指します。
「ああ言えば、彼も理解するかもしれません」というように使用されるのが一般的です。
【どう】
「どう」は疑問詞として使用され、どのような動作や状態を指しているのかを問うために使用されます。
「どう思いますか?」や「どう行動すべきか?」といった形で使われるのが普通です。
これらの指示副詞は、具体的な行動や状態を指し示すことで、会話を明確化し、情報をはっきりと伝える役割を果たします。
また、疑問形を用いることで相手の意見を引き出すのにも有効です。
指示連体詞
「この・その・あの・どの」は、こそあど言葉の中でも連体詞として用いられ、名詞を修飾するのに使用されます。
【この】
「この」は話し手が自分の近くにあるものや、自分が思い浮かべているものを指すときに使用されるケースが多いでしょう。
「このリンゴは甘い」のように、手元にあるものや考えているものを指し示します。
【その】
「その」は聞き手の近くにあるものや、すでに話題となっているものを指すために使用されるのが一般的です。
「その本は面白いですか?」のように、聞き手が持っているものやすでに話題となっているものを指します。
【あの】
「あの」は話し手も聞き手も近くにない、つまり遠くにあるものや、特定されていないものを指すのが通常です。
「あの山は高い」のように、遠くにあるものや特定されていないものを指す際に用いられます。
【どの】「どの」は疑問詞として使用され、どのものを指しているのかを問うために使用されるのが一般的でしょう。
「どのドレスが良いと思いますか?」のように、選択肢からどれを指すのかを問うときに使用するのが普通です。
これらの連体詞は、話し手や聞き手の視点や場所、話の文脈に応じて使い分けられ、名詞を修飾することでそのものを明確に指し示す役割を果たします。
こそあど言葉(指示語)を使用するときの注意点と問題点
こそあど言葉は日本語表現において、特定の対象を明確に指し示すことで会話や文章を明確にする重要な役割を果たします。
しかし、それらを適切に使用するためには、いくつかの注意点と課題があるのも実情です。
以下では、こそあど言葉の使用時に注意すべき要点を説明していきます。
対象との距離を理解する
こそあど言葉は、話者や文脈による対象との距離によってその意味が変わるのが特徴です。
例えば、「この」「その」「あの」はそれぞれ話者からの物理的、心理的距離を表します。
「この」は近く、「その」は中程度に離れているか、既に言及されているものを、「あの」は遠くにあるものを指すのが普通です。
しかし、この距離感は人により捉え方が違うため、対象との明確な位置関係を理解し、適切な指示語を選択する必要があります。
乱用すると意味が伝わらない
こそあど言葉は特定の対象を指し示す便利な言葉ですが、乱用すると文章の意味が曖昧になり、読み手や聞き手が混乱してしまう可能性があるでしょう。
例えば、「それ」や「これ」が何を指しているのかが明確でない場合、文章の全体的な理解を妨げることになります。
したがって、こそあど言葉を使用する際は、それが何を指しているのかを明確にし、文脈に合った適切な指示語を選ぶことが重要です。
使い方を間違えると「曖昧な文章」の原因になる
指示語「こそあど言葉」は、文章をスムーズに進行させるための重要なツールですが、使い方を間違えると、不明確な文章を作り出す可能性があります。
特に、「これ」「それ」などが指している対象が読み手にとって明確でないと、理解の妨げとなります。
そのため、こそあど言葉の使用時には、その指す対象が明確であることを心掛けましょう。
「プロジェクトは予定通りに進行していますが、これにはまだ問題が残っています」
この文章では、「これ」が何を指しているのかが不明確です。「プロジェクト」全体を指しているのか、「進行」の部分を指しているのか、読み手には判断が難しいでしょう。
こうした混乱を避けるためには、「これ」を具体的な表現に置き換えることが有効です。
「プロジェクトは予定通りに進行していますが、進行状況にはまだ問題が残っています」
このように、「これ」を「進行状況」と明確化することで、読み手が文章の意図を正確に理解できるでしょう。
こそあど言葉を使用する際には、その指す対象が一義的に理解できるよう工夫することが重要です。
SEOではキーワードとして認識されない
Webコンテンツの作成やSEO(検索エンジン最適化)においては、こそあど言葉は一般的にキーワードとして認識されません。
したがって、こそあど言葉を多用すると、検索エンジンによるWebページの評価が低くなる可能性があります。
そのため、Webコンテンツの作成においては、こそあど言葉の使用頻度を抑え、具体的な単語を使用する配慮が必要です。
ほかにもWebライティング基本ルールを守るだけで、多くの読者から読みやすい文章としてSEO評価されるようになります。
以下の記事で、初心者がマスターしたい基本ルールについてまとめていますので、参考にしてください。
こそあど言葉が伝わらないときの対処法
こそあど言葉は、話者が特定の対象を指すには便利な指示語ですが、適切に使わないと混乱や誤解を招く可能性があるので注意してください。
以下に、こそあど言葉がうまく伝わらないときの対処法を紹介します。
具体的な表現に直す
こそあど言葉が正確に伝わらない場合、具体的な表現に直すことを検討しましょう。
例えば、「これはよい」という表現が理解されにくい場合、「この本はよい」と具体的な名詞を加えることで、何を指しているのかを明確にすることが可能です。
言及している対象を具体的に明示することで、誤解を防ぎやすくなります。
対象の位置を見直す
こそあど言葉は、話者や対象の位置関係によって意味が変わるので注意してください。
「この」は話者から近いものを、「その」は中程度に遠いものや既に言及されているものを、「あの」は遠いものを指します。
この位置関係が不適切だと誤解を招く可能性があるでしょう。従って、対象の位置を見直し、最も適切なこそあど言葉を選ぶことが大切です。
一文一義にできないか検討する
一つの文で複数のこそあど言葉を使用すると、それぞれが何を指しているのかが不明確になる可能性があります。
その場合、一文一義の原則に基づき、それぞれのこそあど言葉が一つの具体的な対象を指すように文を分割することを検討しましょう。
これにより、文全体の理解が容易になり、こそあど言葉の指す対象も明確になります。
こそあど言葉(指示語)を正しく使ってわかりやすい文章を目指そう
こそあど言葉(指示語)は、会話や文章の中での対象を指すという大切な働きを担っています。
指示語は相手に対象を具体的に伝えるための重要な道具であり、ライティング技術の基本中の基本です。
こそあど言葉が指す対象や場所の違いを理解し、それに基づいて正しく使用することで、相手に意味を正確に伝えることができます。
また、webコンテンツ作成やseo対策では、こそあど言葉の使用が過度になると、サイトの評価が低下する可能性があるでしょう。
そのため、メディアの運用などの状況においては、こそあど言葉の代わりに具体的な名詞を使用するなどの工夫が必要です。
加えて、こそあど言葉の使い方について深く知ることは、一文の中での表現の豊かさを増すだけでなく、読み手や聞き手の理解を深める助けとなります。
これらのポイントを意識しながらライティングの技術を養成し、よりわかりやすい文章の作成を目指しましょう。