本記事では、オウンドメディアの目標を具体的に設定したい方に向けて、KPIツリー作成の方法を解説していきます。
適切な設定ができているか分かるチェック方法や、失敗パターンもお伝えしていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
オウンドメディアのKPIとKGIとは
オウンドメディアにおけるKPIとは、KGIを達成するための中間目標といえます。
それぞれの意味やメリットについて、詳しく見ていきましょう。
KPIとは
KPIとは「Key Performance Indicator」の略であり、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。
最終的なゴールそのものではなく、到達するための中間目標であり、具体的な数値で設定するケースが多いです。
例えばTOEICで高得点を狙うという最終目標を設定するとしたら、KPIは下記の項目になるでしょう。
- テキストを読む回数(例:本番までに○回は通して読む)
- 覚えるべき単語の数
- 1週間の学習時間(例:1週間あたり○時間を学習に充てる)
適切なKPIを設定すると、ゴールを達成するまでの進捗率を把握できます。
KGIとは
KGIとは「Key Goal Indicator」の略であり、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。
例えばオウンドメディア運営におけるKGIは、下記のとおりです。
- 集客:ユーザー数の増加、売上アップ
- ブランディング:認知度を上げる
- 採用:応募者数の増加、離職率の低下
KGIが設定されていないとオウンドメディアの方針が定まらないので、企業課題を把握したうえで導き出してください。
KPIとKGIの違い
KPIとKGIの違いは、目標を達成するルートのなかで、どの地点に注目するかに表れています。
- KPI:ルートそのもの、中間地点
- KGI:ゴール
複数のKPIを達成していくうちに、KGIというゴールに到着するイメージです。
オウンドメディア運営においてKPIとKGIの設定は、着実に目的を達成するため不可欠といえます。
次の項目では、オウンドメディアのKPIを実際に設定する方法について見ていきましょう。
オウンドメディアでKPIを設定する方法
オウンドメディアにおけるKPIを設定する方法は、下記のとおです。
- KGIから決める
- KPIツリーを作成する
- KPIを数値化する
KGIから決める
オウンドメディア運営でKPIを決めるときは、まずKGIを設定します。
ゴールがあやふやだとKPIの内容が定まらないので、必要であれば戦略の時点から見直してください。
例えばオウンドメディアで自社商品をブランディングするというKGIが決定できれば、コメント数やSNSシェア率がKPIになります。
オウンドメディアで達成したいKGIを設定してから、KPIを逆算する流れです。
KPIツリーを作成する
KGIを設定できたら、いよいよKPIを作っていきます。
KPIを作成する段階では、KPIツリーを作るとスムーズです。
KPIツリーとは、KGIから逆算したKPIをツリー状に表現したもの。全体像を把握しつつ、必要な施策が抜けていないかチェックできます。
「KGIを達成するためには、このKPIで十分か?」という視点を持ち、KGIを分解していきましょう。
KGIを分解していくと、下記のような数式がいくつも出来上がります。
- KGI=KPI①+KPI②+KPI③
- KPI①=KPI1⃣+KPI2⃣
- KPI②=KPIⅰ×KPIⅱ
以上の数式を羅列していくと把握しづらいため、ツリーで構造化して管理しやすくします。
チーム内でKPIへの認識がズレないようにする効果もあるため、KPIツリーを作成後は、スタッフ同士で共有するようにしましょう。
KPIを数値化する
ツリーにしてKPIを洗い出せたら、最後に数値化していく作業です。
KPIを具体的な数字で表現すれば、達成度や進捗状況をチェックしやすくなります。
現場のスタッフが作業と照らし合わせてすぐ分かるように、業務に落とし込んだうえで数値化しましょう。
以上の流れでKPIを設定したとしても、本当に適切な内容になっているか不安になってしまうかもしれません。
次項で解説する「SMART」を利用すれば、KPIの内容が適切かチェックできます。
オウンドメディアのKPI設定は「SMART」でチェック
以下の要件を満たしているKPIは、目標設定として適切な内容といえます。
- Specific:明確
- Measurable:計測可能
- Achievable:達成可能
- Relevant:関連性
- Time-bounded:期限設定
例えばオウンドメディア運営のために「コンテンツ数を100本投稿する」というKPIを設定したとしましょう。
このKPIは明確で計測可能であり、オウンドメディア運営との関連性もありますが、達成が可能かという視点は、社内リソースによって変わってきます。
もし人的リソースが足りず、担当者がライターも兼任するのであれば、達成困難と言わざるを得ません。
また、期限設定の視点も抜けているため、「○日までに」「○ヶ月で」という制限を設けるべきです。
このようにSMARTの法則を用いれば、KPIの内容が適切か簡単にチェックできます。
オウンドメディアのKPI事例
この項目では、オウンドメディアにおけるKPIの事例を見ていきましょう。
オウンドメディア運営におけるKPIは、大きく下記の内容に分けられます。
- 集客・リード獲得につながる
- ブランディングにつながる
- 採用につながる
自社の目的に合わせて、KPIを使い分けてみてください。
集客・リード獲得につながるKPI
集客やリード獲得につながるKPIは、下記のとおりです。
- 投稿数
- コンバージョン数
- LPまでの到達数
投稿数
投稿数とは、オウンドメディアで公開するコンテンツの数であり、集客において基本となるKPI。
Googleはサイトの専門性や網羅性を評価していますが、投稿数が少ないと基準を満たしづらいです。
SEO対策でオウンドメディアの流入数を増やしたいなら、投稿数の確保は必須といえます。
オウンドメディアのコンテンツは、コンバージョンへの流れを意識したうえで作ることが重要です。
記事制作の流れやキーワード選定の方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
CV数
CV数とはコンバージョン数のことであり、オウンドメディアで獲得した成果の数です。
オウンドメディアの目的によって、コンバージョンの内容は変わります。
- お問い合わせ数
- 会員登録数
- 無料相談の申込み数
- 購入数
- エントリー数
オウンドメディアの成功レベルを推し量るうえで、最も分かりやすい指標といえるでしょう。
LPまでの到達数
ユーザーを成果発生の地点まで誘導するには、ランディングページ(LP)の存在が重要です。
ランディングページとは、自社の成果を発生させることを目的としたページであり、商品やサービスの訴求を行います。
LPまでの到達数が上がれば、コンバージョン率のアップが期待できます。
ブランディングにつながるKPI
ブランディングにつながるKPIの例は、下記のとおりです。
- 検索順位
- UU:訪問者数
- SS:訪問回数
- PV数
- オーガニック検索の流入数
- SNSシェア数
- SNSフォロワー数
- コメント数
検索順位
検索順位とは、Googleなどの検索エンジンで、Webサイトが何位に表示されているか示します。
オウンドメディアの検索順位が高いほど、ユーザーとの接点になる確率が高まり、認知度向上に寄与するでしょう。
UU:訪問者数
UU数とは「Unique User」の略であり、オウンドメディアに訪問した人数を計測します。
例えば3ページが閲覧されたとしても、1人のユーザーによる行動であれば、UU数のカウントは「1」です。
オウンドメディアの認知度や人気度を計測するにあたって、リアルな数字といえます。
SS:訪問回数
SS数とは、セッション数とも呼ばれ、ユーザーがオウンドメディアに訪問した回数です。
Webサイトへの訪問から離脱するまでの流れを「1」と計測します。
UU数と異なり、同一人物が再訪問した場合もカウントされます。
PV数
PV数とはページビューを指し、ページが何回閲覧されたか計測する指標です。
訪問者が1人だとしても、5ページ閲覧されたら5PVとなります。
オウンドメディアが実際にどれくらい利用されているか調べたいときに、有用な指標といえるでしょう。
オーガニック検索の流入数
オーガニック検索の流入数とは、Googleなどの検索エンジンからWebサイトに流入した人数です。
SEO対策をしている場合、成果が出ているか計測できる指標となります。
オーガニック検索の流入数が高ければ、認知度アップやファン育成に寄与するでしょう。
SNSシェア数
SNSシェア数とは、TwitterやInstagramなどのSNSで、記事が拡散された回数です。
話題のきっかけや意外な情報など、知人・友人に教えたくなるような記事が広められやすいです。
SNSのシェアはコメントが付く場合が多いので、ユーザー間で話題に上りやすく、ブランディングにもつながります。
オウンドメディアと同時にSNSを運用する場合に有効なKPIですが、自社でコントロールできないため、行動の指標にはなりません。
SNSフォロワー数
SNSフォロワー数とは、TwitterやInstagramなどのSNSアカウントについたフォロワー数です。
フォロワー数が多いほど、一気に大量の人へ情報が拡散できるため、投稿を見つけてもらいやすくなります。
コンテンツが検索上位になるまでは時間がかかりますが、フォロワー数が5,000人いれば、その人たちには見てもらえる確率が高いです。
コメント数
コメント数とは、オウンドメディアやSNSについたコメントの数です。
わざわざコメントを付けてくれるほど、強い関心・好意を持っているユーザー数を測れます。
採用につながるKPI
採用につながるKPIの例は、下記のとおりです。
- 応募者数
- 内定辞退数
応募者数
オウンドメディア運営における応募者数とは、Webサイト経由で応募してきた人数を指します。
自社の魅力や社風をオウンドメディアで発信できれば、ミスマッチが少ない応募者を獲得できるでしょう。
内定辞退数
内定辞退数とは、選考の結果として内定を出したにも関わらず、相手に辞退されてしまった回数です。
オウンドメディアにより、ユーザーと自社の間で価値観のすり合わせが完了すれば、内定辞退数の減少に寄与します。
フェーズ別のKPI
オウンドメディアは中長期的な運営になるため、同じKPIを使い続けると、現状とミスマッチになってしまうでしょう。
この項目では、オウンドメディアのフェーズ別に掲げるべきKPIの例を見ていきます。
立ち上げ|構築フェーズ
オウンドメディアを立ち上げた当初は、運用体制の土台作りにKPIを設定します。
最初はコントロールできる行動目標を立てると、成果を出すフェーズまでモチベーションが持続するでしょう。
- サイト設計を○日で完了させる
- 業務担当を○人で割り振りする
- ライター募集を○日までに完了させる
- 制作スケジュールの○日までに設定する
- ○円までの予算で効果検証ツールを導入する
オウンドメディアの立ち上げ手順については、下記の記事で解説していますので、全体の作業を知りたい方はご参照ください。
初期|制作フェーズ
オウンドメディア運営の初期では、制作フェーズとしてコンテンツ数を伸ばしていきます。
認知度が無い段階で集客や成果に関するKPIを設定しても、達成できないため、まずは種を蒔いていく段階です。
- 記事の作成数
- 記事の公開数
オウンドメディアの内容を充実させなければ、今後の集客や成果獲得につながっていかないので、焦らず記事を投稿していきましょう。
中期|集客フェーズ
オウンドメディア運営の中期では、コンテンツがある程度充実した時点で、集客のKPIを設定します。
- PV数
- SS数
- UU数
- 検索順位
- 滞在時間
それぞれの指標を用いて、オウンドメディアを改善していき、より高いクオリティーを目指す段階です。
分析で使用するツールについては、下記の記事で解説しています。
後期|成果獲得フェーズ
オウンドメディア運営が後期に入ったら、成果獲得フェーズとして、以下のKPIを設定します。
- コンバージョン数
- LPまでの到達数
Webサイトの導線を最適化し、成果を取りこぼさないように設計しましょう。
KPI設定の失敗例
オウンドメディア運営が未経験であれば、どれだけ注意していても、KPI設定を失敗しやすいでしょう。
この項目では、KPI設定の失敗例を見ていき、オウンドメディア運営の成功率を高めていきます。
KPI設定の失敗例は、下記のとおりです。
- 分かりにくい
- 多すぎる
- コントロールできない
分かりにくい
KPI設定が複雑で分かりにくいと、管理しづらくなってしまいます。
分かりにくいKPIとは、以下のようなものを指します。
- 数値化されていない
- アバウトすぎる
- 目的が曖昧
- 部門ごとに計測方法が異なる
- 週単位で設定していない
KPIの明確さは、確実に目標を達成するため不可欠なので、ちょうどいいバランスを探っていきましょう。
多すぎる
多すぎるKPIは、何を目指すべきか分からなくなってしまい、チームのモチベーションを低下させてしまいます。
行動するにあたっては、1つのKPIに絞るのが理想的です。
コントロールできない
現場でコントロールできないKPIを設定してしまうと、必要なときに改善できなくなってしまいます。
例えば検索順位やPV数は、Googleやユーザーの行動で決定されるため、自社でコントロールできません。
分析や改善の指標にする場合と、行動目標にする場合に分け、適切なKPIを設定していきましょう。
オウンドメディアのKPIを管理する便利ツール
オウンドメディアのKPIを設定したあとは、進捗状況の管理も重要です。
この項目では、KPIを管理するにあたって便利なツールを紹介していきます。
- Excel
- BIツール:Whatagraph
- 目標管理ツール:banto
Excel
Excelは多くの社用パソコンにインストールされているため、使いやすい管理ツール。
進捗状況の管理だけでなく、KPIツリーの作成も可能です。
- ガントチャート表の作成
- SmartArt機能の組織図でKPIツリー作成
- 記事分類やライター管理表の作成
関数の知識があれば、より自由にカスタマイズできるのもメリット。
BIツール:Whatagraph
オウンドメディアのKPIを管理するにあたっては、BIツールが便利です。
BIツールとは、ビジネスの意思決定に関わるツールの総称。
データを分析し見える化してくれるため、業務の改善につなげられます。
この項目では、データ分析に強いBIツールのひとつである「Whatagraph」を紹介します。
Whatagraphはマーケティング担当者向けなので、オウンドメディアでも活用可能です。
ノーコードでレポートを自動化できるため、エンジニアが不要であり、プログラミング目的でスタッフを拡充する必要がありません。
選択したメールアドレスに自動でレポートを送付してくれるため、チーム内での意思疎通がスムーズに進むでしょう。
目標管理ツール:banto
オウンドメディアのKPI管理には、目標管理ツールの利用も有効です。
目標管理ツールでは、個人や部門ごとに目標や進捗状況を管理できます。
この項目では、目標管理ツールの1つである「banto」を紹介していきます。
bantoは進捗状況の管理に特化しており、組織全体の進捗率を確認できるほか、自動集計した定量目標をグラフで見ることも可能です。
Slackとの連携もできるため、チーム内でのコミュニケーションを効率的に行なえます。
オウンドメディアのKPIまとめ
本記事では、オウンドメディアのKPI設定について、具体的な作成方法や失敗例にも触れながら解説してきました。
オウンドメディアのKPIは、運営する目的によって変わるため、まずKGIから設定していきます。
KPIを設定していくときは、KGIから逆算していきますが、文章で羅列していくと見づらくなってしまうため、ツリー状に整理するのがおすすめです。
オウンドメディアの立ち上げやコンテンツ制作時期など、フェーズに合わせて適切なKPIを設定してください。