ダラダラと長く、回りくどい文章が続く「冗長表現」は、読者に大きなストレスとなり、サイトを離脱する要因の一つ。
サイト運営の点でもSEO評価が下がり、会社の収益にも影響するため、早急に改善すべき課題です。
この記事では、よく見られる冗長表現の改善方法を具体例と合わせて解説します。
読みやすく、離脱者の少ないサイト制作の参考にしてください。
冗長表現とは
記事の内容とは関係のない不要な言葉が多く、長く読みにくい文章のことを「冗長表現」といいます。
集中して執筆していると、つい一文が長くなることがあると思います。
また、少しでも格調高く見せようとして、難しい言葉や過度な修飾語を入れる。あるいは、持って回った表現で読者を焦らしたいこともあるでしょう。その想いが冗長表現を生む原因となっています。
しかし読者は、そんな作戦には乗ってきません。冗長な記事だと分かった瞬間に別のサイトへと去ってしまい、二度と戻ってこないでしょう。
つまり、たった一つの冗長表現が、コンテンツ全体に悪い印象を与えてしまうのです。
冗長表現を改善できるポイント
冗長表現のパターンは大きく分けると9つあります。ここでは、それぞれの改善テクニックを具体的に解説します。
自分がやりがちな冗長表現と、その修正のコツさえ理解できれば、文章を改善することは難しくありません。
「の」の多用
言葉をつなぐ助詞「の」が一文中に3回以上連続して出てくると、間延びした文章になります。
改善のポイントは「の」を別の表現に言い換えるか、省略することです。
例1
▽場所:「~にある」に言い換える
机の上のパソコンの電源
↓
机の上にあるパソコンの電源
例2
▽時間:「~における」に言い換える
会議中の電話の使用の制限
↓
会議中における電話の使用制限
例3
▽対象:「~に関する」に言い換える
来期の人材採用の予定の説明
↓
来期の人材採用に関する予定の説明
例4
▽所有:「~が持っている」に言い換える
あなたのパソコンのファイルの中身
↓
あなたが持っているパソコンのファイルの中身
例5
▽「の」を省略する
日本の伝統の文化の継承
↓
日本の伝統文化の継承
「という」「こと」の表現
内容を説明したり、文章をやわらかい印象にするため、特に文末に多用される書き方です。
しかしほとんどの場合、なくても問題ありません。明確な意図がない場合は、削除しましょう。
~することができる→~できる
~ということである→~である
~などである→~である
例文
挑戦することができます→挑戦できます
あなたの責任ということである→あなたの責任である
私の役割は料理や洗濯などである→私の役割は料理や洗濯である
同じ単語の重複
一つの文中に同じ単語が重複するとリズムが悪くなり、分かりにくい文章になります。ライティングの初心者によく見られる表現です。
主な改善方法は次の3つがあります。
- どちらかの重複単語を削る
- 別の単語に言い換える
- 言い回しを変更する
例1
▽重複単語を削る
この冷蔵庫は節電ができる冷蔵庫です
↓
この冷蔵庫は節電ができます
例2
▽別の単語に言い換える
果物の中では、少し酸味がある果物が好きです
↓
果物の中では、少し酸味があるものが好きです
例3
▽言い回しを変更する
文章の中で同じ単語が何度も出てくる文章は、読みにくい文章です
↓
一つの文章に同じ単語が何度も出てくると、読みにくくなります
同義語・類義語の重複
同じ意味をもつ単語を「同義語」、似た意味を持つ単語を「類義語(類語)」といいます。
同義語・類義語が重複すると、冗長になるのと同時に、文章が稚拙になり、書き手の文章力が疑われることも。
重複して使われやすい同義語・類義語は大体決まっているので、その語句をリストにしてチェックすることで改善できます。
例文
・約1か月ほど前→約1か月前/1か月ほど前
・まず最初に→最初に
・違和感を感じる→違和感がある
二重敬語
より一層の敬意を伝えようとして、敬語を重ねてしまう書き方が「二重敬語」。
敬語表現は一文にひとつがルールです。
二重敬語は相手に失礼になるばかりでなく、文章としても煩雑で読みにくくなります。
例1
▽「お/ご」+○○○られる
お越しになられる→お越しになる
ご覧になられる→ご覧になる
例2
▽謙譲語+いただきます
説明させていただきます→説明いたします
伺わせていただきます→伺います
例3
▽役職+「様/殿」
山田部長様→山田部長
各位殿→各位
二重否定
「ない+ない」と二重で否定する表現は文章が冗長になり、読み手を混乱させます。
二重否定は「否定の否定」なので、結局は肯定となります。シンプルに肯定文として書いたほうが、端的で分かりやすい文章に改善できます。
ただし、前後の文脈によって肯定のニュアンスを使い分けるようにしましょう。
例
やってやれないわけではない
修正例
①やればできる
②やればできることもある
③やればできるかもしれない
3つとも肯定文ですが、それぞれのニュアンスの違いに注意が必要です。
余分な接続詞
接続詞は文と文とのつながりを明確にし、記事の論点へと正しく導く役割です。しかし、接続詞を多用すると、逆に文章の流れを妨げて読みにくくなります。
また、文章が次々と接続されていくため、意味が通じにくい冗長な文章になりかねません。
余分な接続詞は積極的に削除しましょう。「逆接」の接続詞以外は、ほぼ削除して問題ありません。
削除してよい接続詞例
・そして
・また
・さらに
・なぜなら
例文
私はバスを使った。なぜなら雨が降っていたからだ。
↓
私がバスを使ったのは、雨が降っていたからだ。
余分な修飾語
過剰な修飾語や形容詞で飾られた冗長な文章は、くどくて、読みにくいだけです。余計な言葉は削除して、できるだけスリムな文章にしましょう。
例文
この音楽は、誰が聞いても素晴らしいと最高の評価が与えられるべき完成度だ。
↓
この音楽には、最高の評価が与えられるべきだ。
「誰が聞いても素晴らしい」は「最高の評価」で通じ、「完成度」はなくても意味が変わらないため削除したほうが読みやすくなります。
長い前置き
前置きを長くして、少し焦らしながら要点に導くほうが、読み手の興味を煽ると思うかもしれませんが、まったく逆効果です。
長い前置きは、要点にたどり着く前に読者が離脱してしまいます。
例えば、東京のおいしいレストランを検索している人が、次の文章に出会えばどう思うでしょうか?
例文
日本最大の都市、東京。世界中からたくさんの人たちが訪れ、さまざまな情報や文化が集まります。もちろん、レストランもたくさんあり、世界中の料理を楽しむことができるのも東京の魅力の一つ。しかし、あまりにレストランの数が多すぎて、どこに行けばいいのか迷ったりしていませんか?そんなあなたのために、とっておきのおすすめレストランを10件ご紹介しますので参考にしてください。
おそらく読者は、「余計な前置きはいらないから、さっさとレストランを紹介してほしい」となります。あるいはそれ以前に、最初の一文を読んだ時点で他のサイトへ去っていきます。
修正例
数ある東京のレストランから、厳選したおすすめレストランを10件ご紹介!
東京には世界中の料理が楽しめるレストランがたくさんあり、選ぶのも大変ですよね?ぜひ参考にしてください。
前置きを完結にして、読者が求めている答えにできるだけ早く導くことが大切です。
Webライティングでは完結で分かりやすい文章が好まれます。紙媒体では違和感のない文章でも、Webに掲載されると違和感を覚えることもしばしばです。以下の記事では、Webライティングに携わる人が知っておきたい基本ルールを解説しています。
使い方を間違えると冗長表現になるケース
冗長になる言葉の使い方と改善方法9選を解説してきましたが、ここからは冗長になりがちな記事構成の事例を紹介しましょう。
上手に使うと効果的ですが、ほとんどの場合ただ冗長なだけなので、注意が必要です。
脱線
記事の内容を補足しようと思い、「余談ですが…」とか「ちなみに…」として、自身の経験談などを挟んでいる記事を見かけます。
そもそも「余談」とは、本筋から脱線した雑談であり、記事の要点を補足することはできません。
個人ブログならともかく、企業サイトの社内・フリーランスライターの脱線話は、誰も興味がなく、冗長なだけなので不要です。
どうしても書きたい場合は、別見出しや記事の最後に別囲みで書くようにしましょう。
予防線
記事内の情報に自信がないとき、「あくまでも個人の感想ですが…」と予防線を張るのも冗長な文章につながります。
予防線は、記事内容を批判されることを恐れ、他の可能性もあることを示唆している文章で生じます。
しかし、読み手が欲しているのは「個人的な見解」でなく、エビデンスに基づいた正確な情報であり、企業の公式な見解です。
予防線が必要な情報は、それ自体が冗長で無駄な存在です。しっかり調査・確認をして、予防線が不要な情報を書くようにしましょう。
定型文・慣用句
記事の冒頭や締めの言葉、文中での日本語の言い回しに困ったときに、定型文や慣用句はとても便利です。
的を射た定型文・慣用句を使うと効果的で、読み手の理解を助けてくれます。
しかし、ありふれた定型文は記事の独自性を損なう可能性も。
オリジナリティのない記事は、手抜きと受け取られることもあるため、軽々に定型文や慣用句を使用しないようにしましょう。
文章が冗長になる原因のひとつに、修辞法(レトリック)の使いすぎがあります。以下の記事では、修辞法とはどのようなものか、また修辞法の種類別例文を掲載しています。冗長表現を避けつつ、人の心を動かす印象的な文章を作るのにお役立てください。
「回りくどい文章」は段落全体の冗長表現
「言いたいことは理解できるけれど、ちょっと分かりにくい」という場合、文章が長く、回りくどくなっていることが要因の一つです。
無駄な言葉を連ねた結果、段落全体が回りくどく冗長で分かりにくい記事になってしまいます。
その「回りくどい表現」を防ぐための4つのテクニックを紹介します。
一文一義の文章を心がける
一つの文章で伝える情報を一つに絞ることを「一文一義」といいます。
一つの文章に多くの内容を盛り込むと、冗長で、意味が不明瞭になってしまいます。「一文で伝えることは一つだけ」と心がけてください。
また、一文内の文字数は80文字以内で収めるようにしましょう。
例文
今回私たちが提案する企画は、非常に画期的な営業のやり方で、営業部の担当者たち全員がこの方法を体得することができれば、どんなに厳しい環境であっても確実に新規顧客を獲得することができ、課せられた高いノルマも達成することができるという内容なので、ぜひともマスターしてみてください。
これでは結論までの距離が長いため、途中で読者は離脱します。
修正例
今回提案するのは非常に画期的な営業のやり方です。
どんな厳しい環境でも確実に新規顧客を獲得できるでしょう。
その結果、課せられた高いノルマも達成することができるという内容です。
ぜひ、営業部の担当者全員でマスターしてください。
このように文章を短く分割することで、伝えたいことが分かりやすくなります。
さらにコラムとブログの違いを意識して、客観的な表現を心がけると読者の理解がが進みます。
結論から述べる
印刷物の場合は、「起承転結」が記事の基本構成です。前段で問題を提起し、中盤で盛り上げて、最後にオチをつける流れです。
しかしWebではそうはいきません。読み手は、何らかの「解決策」や「疑問への答え」を知りたくて、サイトを訪れます。
そんな時に、最初に回りくどく、結論が見えない冗長な文章が書かれていては、その先は読んでもらえません。
Webの記事構成は、最初に結論を書く「PREP方式」で書くのがお勧めです。
P=Point(結論・要点)
R=Reason(理由)
E=Example(具体例)
P=Point(結論)
すでに解説した内容は繰り返さない
要点を強調したいあまり、何度も同じ説明を繰り返してしまい、くどくて、冗長な文章になっていませんか?
同じことが何度も書かれている記事は、しつこくて、読み進めようとすると苦痛を感じてしまいます。
記事が途中で「中だるみ」してしまっていることが原因かもしれません。長くなり過ぎて、途中で再度、同じことを繰り返さないと、要点がぼやけてしまうケースです。
論点がダブったり、ズレたりしないように、前段を読み返しながら書くことで、繰り返しを防ぎましょう。
読者が知っている内容は簡潔に説明する
例えば、「上野公園にパンダがやってきた」という記事で、いまさら「パンダは中国に住む白黒の熊です」のような、誰でも知っている説明は不要です。
説明するとしても、一言「中国からやってきたパンダ」くらいの最低限の注釈で十分です。
また、読者の知識レベルによっても説明の量は異なります。将棋の中級者を読者にした記事では、各駒の動かし方の説明は不要ですが、初心者には丁寧な説明が必要でしょう。
読み手のレベルを意識した、簡潔で適切な解説で、分かりやすい記事を書くように心掛けてください。
ただし、冗長表現を意識するあまりに「こそあど言葉」を多用してしまうことがあります。WEBのSEOライティングでは指示語が増えすぎると評価されづらくなるので注意しましょう。
以下の記事ではこそあど言葉を多用するリスクや正しい使い方について解説していますので、参考にしてください。
冗長表現をチェックする方法
さまざまな冗長表現について、改善方法を含めて解説してきました。
しかし、いざ自分が書いた文章を読み返してみても、なかなか冗長表現を見つけるのは難しいものです。
そこで、文章が冗長になっていないかを簡単にチェックする方法を紹介します。
声に出して文章を読む
自分の文章でも、声に出して読んでみると、「ここはちょっと回りくどいな…」と引っかかる箇所が見つかります。
特に「の」「という」「こと」の多用や同じ単語の重複、二重否定は見つけやすい冗長表現です。
とはいえ、自分の原稿は、声に出しても流し読みになりやすく、隅々まで注意が行き届きません。
できれば、他の人に読んでもらうか、無料の音声読み上げツールを利用するのがおすすめです。
ワードや校正ツールを使う
「Word」や「Googleドキュメント」などの文書作成ソフトについている校正機能の活用も有効です。
同義語・類義語の重複や二重否定があると、その部分に青い下線が引かれ、修正箇所を教えてくれます。
ただし、精度は完ぺきではないので、あくまで補助ツールとして活用するといいでしょう。
不要な言葉を省いて心地よい読み味にしよう
余計な言葉をそぎ落とし、簡潔に分かりやすく書くことはWebライティングの基礎です。
書き手としては、回り道をした婉曲な表現をしたくなりますが、それでは読者はついてきません。
冗長な文章はサイトから読者が離れる要因となり、ビジネスにも影響します。
逆に冗長表現をなくすことができれば、離脱者を減らし、サイトの評価アップにつなげることも可能です。
冗長表現のパターンを理解し、伝わるライティングの参考にしてください。